麻布十番の街路樹

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麻布十番商店街は昭和58年(1983)に東京都モデル商店街の指定を受け、商店街の近代化に取り組みました。緑豊かな街づくりをめざして 昭和61年(1986)にはパティオ十番を完成、平成3年(1991)にはアーケードを撤去し街路樹を植え 歩車のセラミックタイル、車道の石畳、街灯の改修等を行ってきました。街路樹はブロックごとに異なった 種類の樹が植栽され、季節毎に異なった趣の緑が楽しめます。それぞれの木々の名前、わかりますか。 カツラ、クスノキ、ケヤキ、コブシ、トチノキ、ヤマボウシ、ハナミズキ、モミジバフウ、 さぁ、どこにどの樹が・・・。街の木々には気もとめることもなく見過ごしている方がほとんどだと思います。今度お買い物の時には街路樹を見ながら歩いてみてください。お車に気をつけて。



◆ トチノキ  Aesculus turbinata /トチノキ科/落葉高木/
 
 トチノキは北海道西南部から九州に分布する落葉高木。おもに冷温帯域の山地に生育し、高さ30mほどの巨木に成長する。沢筋や谷沿いなどの土壌・水分状態の良好な場所に多い。葉は大きく、5〜7つに掌状に分かれており、天狗の団扇と呼びたくなる。5〜6月に大型の房状花序を付け、白い花を咲かせる。 街路樹に使われるようになったのはヨーロッパのマロニエと同じ仲間なので、そのイメージがあるのかもしれない。乾燥する場所では成長不良で、粘土質土壌の場所も良くない 。

     


トチノキ(フクヤ前歩道)


トチノキ(クマイ前)


紅葉したトチノキの葉


◆ コブシ Magnolia kobus /モクレン科/モクレン属/落葉高木

 コブシは北海道から九州に分布する落葉高木。山に春を呼ぶ植物として歌にも歌われる。冬芽は毛に覆われた厚い鱗片に包まれており、花芽の冬芽は大きく膨らんでいる。3月から5月にかけ、白い花を咲かせる。低地では花がまず咲くが、海抜の高い場所では花と葉が同時に出る。花弁は6枚で中心に近い部分は赤味を帯びる。顎片は3枚で花弁とよく似ているが小さい。雄しべは多数あって雌しべ(群)の根元に位置している。果実は奇妙な形で、こぶこぶになる。秋になると割れて中からあざやかな種子がでてくる。



春 コブシ満開 2007.3.21.
 


2007.3.21.
 


コブシ (川口金物店前)


コブシ (オバタ薬局前)


コブシ (ふらわーしょっぷマツヤマ付近)


◆ モミジバフウ Liquidambar styraciflua / マンサク科/落葉高木/北米・中南米原産

モミジバフウはアメリカフウとも呼ばれ、北米から中南米原産の落葉高木。日本には大正時代に渡来し、街路樹や公園木として植栽されている。フウ(楓)は中国・台湾原産であり、葉が3裂するが、モミジバフウはモミジによく似ているので、モミジバフウの名がある。葉の長さは12〜18cmで5〜7裂する。花は4月頃に咲き、雄の花序は長さ5〜8cm、雌の花序は球形で垂れ下がる。枝にコルク質の稜(翼)ができる特徴がある。秋の紅葉は美しい。

モミジバフウの葉→
もみじの葉のようなふうの木

     


モミジバフウ(ビスコ前)


モミジバフウ (イマイ電気前)


紅葉のモミジバフウ


◆ ハナミズキ  Benthamidia florida/ミズキ科 /ヤマボウシ属/落葉高木/アメリカ原産

ハナミズキは以前、アメリカヤマボウシと呼ばれ、植物園に植栽されている程度であった。近年はハナミズキとして広く庭園、街路樹などとして植栽されるようになった。種小名の florida に示されているように、アメリカの東部海岸からメキシコにかけて分布する。ポトマック河畔に植栽されているソメイヨシノの返礼として日本にもたらされたことは有名である。
 ヤマボウシに似ているが、ヤマボウシが展葉した後に花開くのに比べ、まず花を開く点、花弁のように見える総苞片の先端がくぼむことで容易に区別できる。紅色を帯びるものはベニバナハナミズキと呼ばれる。白花に比べてやや樹勢が弱く、生長に時間がかかる。

 


ハナミズキ 雑式通り


ハナミズキ


紅葉のハナミズキ(フクヤ前)


ベニバナハナミズキ

ハナミズキの実
春に白やピンクの花が咲くハナミズキ

秋に赤い実をつけることをご存じですか

毎年見ていた花ですが こんな可愛い実をつけることに気がつきませんでした

そのほかの街路樹もよく見ると実が見られるかもしれませんよ

ヤマボウシやコブシも形は異なりますが赤い実がつくそうです



◆ クスノキ Cinnamomum camphora (L.) Sieb./クスノキ科/常緑高木/

 暖地に野生し、しばしば公園や社寺林に栽培されるクスノキ科の常緑高木。常緑樹ではあるが、葉の寿命は1年間で、春に新葉がでる頃に前年の葉は落ちる。新緑の美しい常緑樹である。5月の終わり頃から房状の小さな花を咲かせる。
ショウノウ(樟脳)はクスノキの材を水蒸気蒸留して得られるモノテルペンに属するケトンの1つで防虫剤と強いて広く使われた。クスノキにこのような物質が含まれているということは、クスノキの材そのものに防虫作用があるということであり、クスノキでタンスを作ると防虫性が高いことになる。神社などに大きく生長したクスノキが見られることがあるが、この防虫作用と長寿であることとは関係が深いであろう。古代の丸木船の中にはクスノキを使ったものがあるという。大型の丸木船を作るために大木が必要であったことと、腐りにくいことがあったのかも知れない。

【参考・・・岡山理科大学 植物生態研究室(波田研)のホームページ】

 



(魚可津前)



(ミクラヤ前)


(四つ角)


◆ ヤマボウシ  Benthamidia japonica / ミズキ科 ヤマボウシ属/ 落葉高木 /

開花時期は5〜6月。もともとは野山に自生しており、近年では野性的な姿が人気を集め、一般家庭でもシンボルツリーとして、しばしば植えられる。ハナミズキに似るが、樹皮に細かい網目模様がなく、花(正確には苞)の先端が尖ることで区別できる。花色は白と赤とがある。和名は山法師であり、白い総苞が白いずきんをかぶった山法師を連想することから付けられた。秋には赤いイチゴを連想させるような果実ができ、甘くて食べられる。



ヤマボウシ(マック前)



ヤマボウシ
花弁のように見える総苞片の先端が尖っています



ヤマボウシとクスノキ
十番通り 一の橋方向を見て



◆ カツラ Cercidiphyllum japonicum /カツラ科 / 落葉高木

 カツラは北海道・本州・四国・九州に分布する落葉高木。暖温帯上部にも見られるが、主にブナ林域などの冷温帯の渓流などに生育する。 幹は株立ちとなることが多いが、主幹はしっかりと存在している。枝は長枝と短枝を形成する。長枝は細く、葉は対生する。2〜2.5cmの葉柄があり、通常赤味を帯びる。葉は長さ3〜7cmで基部は浅い心形で先端はやや尖る。近年、街路樹として植栽されたものを見るようになったが、冷涼な渓谷に生育する植物にとっては迷惑なようで、生長は芳しくない。

     



カツラ (吉野屋豆腐店前)



カツラ



カツラ (南山小学校坂下)



◆ ケヤキ Zelkova serrata /ニレ科/落葉高木/

 ケヤキは高さ30mを越えることもある落葉性の高木。本州以南の日本各地、朝鮮・中国・台湾に分布する。渓谷沿いや水分条件の良い平野などによく見られる。枝はほうき状に広がって美しく、都市公園や街路樹などにも広く植栽されている。特に関東平野では街路樹や公園木として広く植栽されており、特有の景観を醸し出している。関東地方のローム層が生育に適しているのであろう。材は木目が美しく、狂いも少ないので家具材・楽器・器具材などに広く利用されてきた。

パティオ十番には6本のケヤキの木があり 四季それぞれに美しいすがたを見せてくれます。

【参考・・・岡山理科大学 植物生態研究室(波田研)のホームページ】

 


ケヤキ(パティオ)4月


新緑のパティオ十番
 

ケヤキ 7月



ケヤキ 11月


ケヤキ 12月


ケヤキと月(パティオ)12月
 


◆ イチョウ Ginkgo biloba L.  イチョウ科/イチョウ属/ 落葉高木

 イチョウは中国原産の落葉高木であり、室町時代から日本各地に植えられている。病虫害にも強く、大きく成長したものが各地のお寺などに見られる。雌雄異株。葉は扇形で、葉脈は平行脈。葉は半円形であるが、中央部で浅裂する傾向があり、若い木ほど深く分かれる。強く剪定した場合なども2つに分かれた葉が出る。枝には長枝と短枝がある。痩せ地にもよく耐えて生育し、萌芽性も高いので、刈り込んで生垣に利用することも出来る。種子はぎんなんであり、食べられる。材は良質で、碁盤などに利用される。
(←写真は 網代公園のイチョウ )

◆ イロハモミジ Ace palmatum /カエデ科/カエデ属/落葉小高木

 イロハモミジは福島県以西の本州、四国、九州、朝鮮に分布する落葉の小高木。主に太平洋側の低山に生育する。葉は5〜9つに掌状に分かれ、やや荒い鋸歯がある。タカオカエデ、イロハカエデとも呼ばれ、庭園等にも広く植栽されている。4月から5月にかけ、葉の展開直後に紅色の雄花と両性花が混在した花序を形成する。和名の由来は、葉の裂片を数えるとき「イロハニホヘト」と数えたことに由来するという。しかし5裂であることも多く、特にシュートでは5裂のことが多い。秋の紅葉は美しく、各所で秋の彩りとなっている。

◆ シダレヤナギ Salix babylonica /ヤナギ科/ヤナギ/落葉高木

 シダレヤナギは中国原産の落葉高木で、奈良時代に持ち込まれた。各地で水路沿いや公園などに植栽されており、街路樹にも多用されている。雌雄異株であるが、雌株は少なく、繁殖は挿し木による。風に柳、暖簾に腕押し・・・梢から垂れ下がった枝は風にそよいでまことに涼しげで 、この清涼感が樹下の「お化け」を連想させるのであろうか。このような垂れ下がる枝は風には強いであろう。ヤナギの仲間は挿し木によって簡単に繁殖する。逆に言えば、枝が風に吹き飛ばされ、あるいは水に流されていく方法も1つの繁殖方法である。

新一の橋のヤナギ



網代公園のモミジ

善福寺の逆さイチョウ



黄葉した逆さイチョウ



◆ いかがですか、こうしてみると麻布十番にはいろいろな樹がありますね。街路樹の他にも、十番稲荷神社や網代公園、一の橋公園には桜の樹があります。善福寺の柳の井戸の柳、逆さ銀杏のイチョウ、賢崇寺にも大きなイチョウがあります。都会のど真ん中ですが麻布十番は緑ゆたかな街ですね。 ブロックごとに植栽したと思っていましたが、あらためて見ると十番通りの街路樹は混ざっているようです。葉の形で確かめてみてください。

赤い靴


◆ ミニパーク モニュメント「KUMO」 と ケヤキのひろば ◆

 モニュメント「KUMO」のあるミニパークです。六本木寄り ほとんど六本木ヒルズの中と思われる場所にありますが、麻布十番商店街が東京都のコミュニティー商店街の指定を受けて造った広場とモニュメントです。検討に検討を重ね苦心して創った広場とモニュメントが、いつの間にかヒルズのもののようになり、広場のデザインも変えられているのが残念です。 この広場で各国大使、作家も出席され華やかにモニュメントの完成披露のパーティーをしたのは、まだヒルズが出来る前の1996年春でした。あれからもう13年、ケヤキの木もずいぶん大きくなったものです。

「KUMO」とケヤキのひろば

五十嵐威暢作 「KUMO・雲」


六本木ヒルズ ケヤキ坂のケヤキ&イルミネーション